「シャンパンというのは祝いの酒。だからシャンパンはその主役を盛り上げるための脇役。」
醸造家の情熱とオーナーの華やかなサクセスストーリーが、ニコラ・フィアットの今を築いている。

華やかな過去が築いたシャンパーニュ地方
一面に平原が広がるシャンパーニュ地方。地名の語源は平原を意味するラテン語のカンパニア。アルザス・ロレーヌ地方の西側に位置し、中世には現在のイタリアとフランス、オランダ、ベルギーを結ぶ南北の交通路、ドイツとスペインを結ぶ東西の交通路の交差点として繁栄した。シャンパーニュはランスを中心に発泡性ワイン「シャンパン」の産地としても世界的に知られる。シャンパンの製法を考案したのは17世紀の修道士ドン・ペリニョン。この地方で製造されたもの以外はシャンパンと名乗ることができない。シャンパーニュの中心であるランスの歴史は、ローマの属州ベルギーの首都であったガリア=ローマ時代に遡る。498年にこの地でフランク王国を統一したクロヴィスが洗礼を受けて以来、シャルル10世まで25人の歴代のフランス王が戴冠式をおこなう政治的・宗教的に重要な土地として位置づけられてきた。このため、ランスには1991年にユネスコ世界遺産に登録されたモニュメントが4つもある。中心部にはフランス三大聖堂のひとつでジャンヌ・ダルクも列席したシャルル7世の戴冠式で有名なノートル・ダム大聖堂がそびえたつ。ランスはシャンパンの本場で街の郊外には一面ぶどう畑、街のいたるところにシャンパン専門店があり、低価格で購入できる。高級なイメージが強いシャンパンを身近なものに感じることができるだろう。

華麗なるニコラ・フィアットの歴史
創始者の名をブランド名にしたニコラ・フィアットは伝統あるシャンパンメーカーの中で、唯一創始者が存命しているメーカーである。パリでいくつかの企業を経営する父親のビジネスの成功に触発されたニコラ・フィアット氏は、18歳という若さで渡米。その地でアフリカのコーヒーを輸入し成功を収めた。その後、1960年代に入り、フランスのランスにあるドメーヌ・サン・ニコラの畑を譲り受ける。これを機にフランスへ戻り、1976年に独自のシャンパンブランドを作る決意をする。

彼のシャンパンはコーヒービジネスで得た人脈からアメリカのジェット・セブンのメンバーへ広がり、1978年当時のフランスの大統領ヴァレリー・ジスカール・デスタンを迎える晩餐会の公式シャンパンに起用。1986年には、事業拡大のためシャンパーニュ地方中心のエペルネにある協同組合「Centre Vinicole de la Champagne」の協力を得て、傘下の5000もの畑から集められた選りすぐりのぶどうと近代的設備、そして伝統的な技術による醸造で独自のブランドを確立してきた。
ニコラ・フィアットの商品はその品質と価格のバランスの良さで知られ、世界各国のホテル並びに高級レストラン、また気圧の低い上空でも品質が安定しているため、近年ではエールフランスを始めとした航空会社での採用と、幅広い支持を得ている。



醸造責任者ジャン・ピエール・ヴァンサン氏の哲学
「シャンパンというのは祝いの酒で、祝いの席には必ず主役がいる。だからシャンパンはその主役を盛り上げるための脇役に徹しなければならない。自分はそんな控えめな、それでいて力のあるシャンパンをつくりたい。」ニコラフィアットの醸造責任者ヴァンサン氏は言う。また「言ってみれば、シャンパンは親友のようなもので、いつも主役のように話し続ける友人ではなく、控えめだけどその人がいるだけで場が和んだり、楽しくなったり、盛り上がるような、そんな友だちであって欲しい。そして決して、堅苦しく真面目すぎるのではなく、親しみのある味のある奴がいい」とも。
彼が造る最高級シャンパンに、パルメ・ドールと呼ばれる一品がある。彼はこのパルメ・ドールをできの良い年にしか造らない。ニコラ・フィアットの実力と独創性を物語る高貴で質の高いシャンパンである。ブズィー村のピノ・ノワール種、そして厳選されたいくつかのグラン・クリュの畑及びプルミエ・クリュの畑に加えて、モングー村の畑のシャルドネ種を使用している。このモングー村の畑は、格付けされていない。このためパルメドールは、プルミエ・クリュあるいはグラン・クリュの規格を満たしておらず、どちらも表示することができない。それでもヴァンサン氏は言う「絶対モングーでなければだめ」と。そんなこだわりが生み出す秀逸なキュヴェなのだ 。
パルメドールのボトルは、18世紀のクリスタル製のカラフを形どったものである。初めての1985年ヴィンテージはクリスタル製であったが中に含まれる鉛がシャンパンに影響を及ぼしてしまったため、次の年代からはガラス製へと変更している。このボトル一本一本は、全て手作りである。表面のぼこぼこは、シャンパンの泡とニコラ・フィアット氏がアメリカでビジネスをしていた時に通っていたニューヨークのとあるオペラハウスで歌っていた、とても素敵な黒人女性がいつも胸につけていたブラック・パールのネックレスを表現しているというロマンチックな逸話がある。
パルメ・ドールというシャンパンはきらめきがあり、やや深みがある黄金色で、シトラス系の香りを放つ。特にグレープ・フルーツやオレンジの花、またはいちじくなどに、焼き菓子やバターが混ざった、複雑で芳醇な香りを感じさせる。口当たりはベルベットのようになめらかで、コクがあり、とろけるようなエレガントでやわらかな味わいの中に、繊細さが織り込まれたプレステージ性の高いピュアなシャンパーニュである。尚、ジャン・ピエール・ヴァンサン氏は2004年・2007年の2回にわたり、ジャパン・ワインチャレンジにおいて最も優れた醸造家に贈られるワインメーカー賞をシャンパーニュ部門で受賞している。


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